【吉岡先生インタビュー(前半)】イノベーションって何ですか?

お久しぶりです。

引退間近の鳩胸キャットです。

(本記事は「まじめにふまじめ」なキャットにしては珍しく、真面目な記事です。どうぞよろしく。)

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今回は、私たち広告研究会HASCの顧問、吉岡(小林)徹先生に部員3人でインタビューをさせて頂きました。吉岡先生は経営管理研究科・イノベーション研究センターに所属しており、先生の前期ゼミナールは倍率が3倍を超すほどの大人気だそうで…

そんな吉岡先生に、まずは研究内容について伺いました。

早速いってみよう!

     

     

      

右下が吉岡(小林)徹 先生

イノベーションって何ですか?

――先生方は、対面よりもzoomなどのほうがぶっちゃけた話をしてくれないイメージがあります。録画までしてしまうと尚更難しそうだな、と


ははははは!(笑)確かに、多くの先生がそうだと思いますけど、対面だと好きなことを言える(笑)下手なことを言いにくくなって、世知辛い時代だな。。。まあでも今日はね、できるだけ踏み込んだ話をしたいなと思います。


――ありがとうございます!さっそくですが、吉岡先生は「何を研究されているんですか?」と訊かれたらどう答えていらっしゃいますか。


僕はね、新しい知的な成果を生み出す効率を上げる方法を研究しています、要は知的財産を生み出すプロセスの研究をしています、っていう言い方をしています。


――それは「イノベーションを研究しています」というのとはまたちょっと別の?


そうそう、ちょっと違う。「イノベーションの中の一部です」って言い方になるかな。イノベーションってやっぱり幅広いので、いろんな人がいろいろ受けとめるわけですよ。それによっていろんな質問や期待が来ても、僕自身が的確に応えられないし、僕はそこに十分な能力を持っていないので。だから自分が1番得意な領域だけを、今は説明するようにしています。広く学生さん向けにいうなら、僕はイノべーション・マネジメントを研究しています。

――イノベーションを研究するというのは、つまりどういうことなのでしょうか。先生はどのように考えていらっしゃいますか


まずイノベーションを研究するといっても、イノベーションの何を研究するかだと思うんですよ。基本的に、僕はイノベーションを起こしやすくする方法を研究するって言うと1番わかりやすいかな。イノベーションというゴールがあって、行き着くのにどういう道筋がありますよ、その道筋にどういう障壁があってどうやったら乗り越えやすくなりますよっていうのが1番の僕の中心テーマなんです。


――それが知的財産という


そうそう、特にイノベーションといっても幅広いのでその中でも知的財産――技術とか新しいデザインとか、そこがゴールだった場合にはこういう道筋があってこういうところに凸凹があるから、その乗り越え方はこうだよね、みたいなところを研究しています。

――イノベーションの定義ってめちゃくちゃ広いから、吉岡先生はもうそこに絞って


そう、ちょっと絞ってます。

――イノベーションを研究していて、1番楽しいなと思うことは


1番楽しいなと思うのは、たぶん世の中で言われていることと違うことがわかった時ですね。例えば1番典型的には、イノベーションを起こすためにはカリスマの創業者がすごく大事だと言われていて、そういう人に投資した方がいいという話になっています。まあ、カリスマに投資したら大当たりはするかもしれない。だけど実際大外れもたくさんいて、投資効率は必ずしも良くない。寧ろ投資効率が良いのは創業家二代目社長だった。今トヨタは4代目の豊田章男さんだけど、普通なかなか彼に投資しようとは思わない。章男さんに投資するくらいなら、創業者の豊田佐吉さんに投資しようってみんなが言う。だけど分析すると、実は豊田章男さんのほうが投資効率はいい。

――世の中で「イノベーションってこうだ」と思われている誤解を解き明かすのが1番面白い、と


そうそう、まさにその通りですね。

――では吉岡先生から見たときに、イノベーションをこう捉えてほしい、という簡潔な言葉を伺いたいです。


大きな要件は3つしかないです。一番、知的な活動の成果であること。二番、それによって何か今までと違うものが生み出されること。三番、それによって何らかの価値が生まれること。社会に対する価値でもいいし、お客さんに対する価値でもいいし。この三つさえ満たしていればいい。


――それを起こすために、今いろんな苦労をして研究だったり実務だったりがなされている


そうそうそう。言われてみればある種あたりまえなんですよ、頭使って工夫しましょうという話なので。だけど、なかなかそれが上手くいかない。

     

     

     

     

経営の教科書は役に立たず?

――時々テレビで革新的企業の社長がイノベーションについて語っている場面を見ます。そのような人が言っている、ということですべて正しいように思いがちですが、それは学術とは別の観点なのでしょうか。

いやまあ、きちんとした経営者の方って実はそこのところ理解されていて。「自分の条件だったらこれが上手くいった要因だ~」とほとんどの方は理解されてるんです。こういう条件ならこういうことが上手くいく、それを共有し、経験が積み重なることによって成功パターンが見える、というのが多くのきちんとした経営者の方々の考えですね。そういう意味では僕らがやっていることと発想は同じ。彼らは1つの事象に対して深く見ているだけ。

――究極のケーススタディみたいな

そうだと思います。それが多くのきちんとした経営者がやっていること。

――巷の経営者たちもそんなに適当にやっているわけではないんですね

きちんと成果を出している方の多くは、それなりに本質的なことを考えている印象です。その意味でいうと、特にデザイン系の事例の話を聞いていると、成果を出した方がやっていることが意外に教科書通りだったりするんです。経営者自らそうおっしゃることもあります。「僕別にマーケティングの教科書に載っていることやったんだけど」って。

社会学部のあやたにさん、ここまでの話で気になったことはありますか?

――私が一番びっくりしたのは経営に「え、教科書通りやっているんですか??」みたいな風潮があることで。私は普段経営学や組織論などの授業を中心にとっているわけではなくて、教科書通りの知識しか頭にないから、一体教科書ってどういう扱いなんだろうと。

ははははは(笑)それは確かに、経営の意味でいうと悩ましいところがあって。まさに経営者の方は教科書通りやってるとおっしゃるんですけど、「教科書通りにやっていくとビジネスの現場では差別化が起きなくなってしまうのでは」という懸念があるんですよ。要はみんなが同じ方向でやってしまう。だけど、なぜかそれが上手くいく。つまり、ビジネスのゴールはみんなが銘々に設定していると思うんです。どの山を登ろうかということに関しては、それぞれの経営者が自分の意志で人と全然違う山を登ろうとしている。だけど登り方とか準備の道具とかは、教科書に書いてあるものをみんな揃えている。その通りに山を登ったら成功しました、とおっしゃっているのかな。

――細部をそぎ落としていってしまえば大抵教科書通りになるけれど、そこに至るまでのアレンジがそれぞれの色を出すポイントだと。

そう、まさにその通りで、そぎ落としていって共通要素を探していくと教科書になる。だけどさっきの山登りの例えだと、個々の山の状況次第で必要なものは変わってくるし、一緒に登っている人の状況とか心理状態に合わせてやることが変わってくるわけです。

        

       

          

       

前半はここまで~

前半では、イノベーションや経営学といった掴みどころのない話題について、普段の授業にはない視点から分かりやすく教えていただきました。

次回は「他学部の授業ってどのように履修したら良いの?」といった、身近な話題から、吉岡先生が考える「学びとは何か」について迫ります~!

後半記事はこちら

ではでは。