前回記事(前半)はこちらイノベーションについて・理論と実践について
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吉岡(小林)徹先生のインタビュー後半戦!
「他学部の授業ってどのように履修したら良いの?」といった、身近な話題から、吉岡先生が考える「学びとは何か」といった深い話まで気になることを伺ってきました~!
他学部の授業、どう取れば良いですか?
―――イノベーションを研究するってどういうことだろう?という疑問も解消されて、社会学部の私にも分かりやすいです。ありがとうございます。
よかったです!実はイノベーションの中にも社会学との接点があって、社会ネットワーク論という、人との繋がり方がイノベーションを生み出しやすくしているのではないかとう研究があるんですね。まさに皆さんの繋がりなんかそうだと思うんですけど、その繋がりを持ったまま社会に出て。例えば誰かがアントレプレナー(起業家)になったとして、仲間が必要になったときに、皆さん自身が仲間になることも、皆さんが紹介してあげることもできるわけですね。それによってその人はビジネスで大成功する確率が上がるかもしれない。その確率に、そうした繋がり方の形が影響する、なんて議論もあります。これは社会学から来ている議論なんですよ。
―――だから繋がり関連で、組織論は社会学的な社会心理学とも相性が良い?
そう、相性が良いわけです。組織論の中でもイノベーションに寄れば寄るほど社会学と相性が良くなるんですよ。
―――今、一橋の学部の学生は他学部科目が必修になっていますが、結構適当にとってしまう人が多いと思います。自分から興味を持って他学部科目をとるコツや考え方はありますか。
関心ベースでいいと思います。学んだことが活きるかどうかは、その後になってからでしかなかなか気づかないんじゃないかな。僕自身もそうでした。学部のときには経済学的な分析とかもやりましたけど、それが大事だとは正直思っていなかったんですよ。社会に出てから初めて気がついたんです。ダイレクトに役立つというよりも、必要な知識を新しく学ぶときの足がかりになるんです。僕は経済学的な分析には、なんとなく興味があったことは覚えています。そういう意味では、違う学部のやつでも、ちょっとでも関心のあるテーマだったら、何か役立つかもなあと、或いは視野を広げるつもりで受けた方がいいかなと思います。適当というのでも、関心があって選ぶならムダにはならないと思います。
―――「キャリアを考えて」「役に立つから」というよりは「役に立てば儲けものだな」くらいの感じですかね。
そうそうそう。まさにイノベーションなんかそうですけれど、今読めないわけですよ。だからある程度幅広い先行投資をしておかなくちゃいけない。その先行投資の1つだと思います。
―――他学部の学びをただちに役に立てなくても良い、というのは身につまされます。私は自分の専門領域に関係する他学部科目を取っているので、反省しました。
それぞれの人にとって、モチベーションの上げ方は違うので、役に立つことを学びたい、というのもモチベーションの要因ですよね。それはそれで構わないです。それはそれでものすごく役に立つので。とにかくモチベーション高く勉強できれば何でも良いと思います。
―――楽だから取る、というのでなければ良いということですよね。
楽だけど、その科目を真剣に勉強するなら全然良いと思います。楽だからとっても、そこで紹介された本一冊くらい読もう、という気持ちでも良いと思いますよ。そこに自分で自発的な意識でやっていくのであれば全然良いと思います。一番悪いケースは単位を取るためだけに最低限こなす、みたいなので、もったいないですね。
―――僕は他学部の授業を受けることってすごく大事だなと思っているんですけど、先生は他学部の必修単位はもっと多い方がいいと思いますか?
ああ、それは個人次第で、全員に強制的に受けさせる必要はないと思うんですね。興味があって深掘りさえできればいいと思うんですよ。ある学部に入っているのはその学部に関心を深く持っているからという学生さんが多いので、無理に負荷をかけて横に広げさせようとしなくてもいいのではと思います。だから全員にさせるかというので言えば僕はノーだと思うんですよ。ただ、関心がある人に対しては、機会は提供した方がいいと思います。それって別にCAPの問題ではなくて、「潜り」でも構わないんです。全然「潜り」ありだと思うんですよ。。。これ僕が言っていいのかな(笑)僕自身は、学部生時代、た学部もそうですし他大学にも潜ってました。僕法学だったんですけど、自分の通っていた阪大が自宅から遠くてだるかったんで、京大に通ってました。同じ先生が教えてたんですよ。じゃあ京大に受けに行ったらいいじゃんって受けに行ってたら、そしたら、摘発されました(笑)「君大阪大学の子やんなぁ」って!(笑)
―――先生が覚えてたってことですか!?
覚えてた覚えてた。すごいなあと思います。第1回の講義でしか会っていないのに顔を覚えられていたんですね。まあ許してくださったんですが。。。(笑)
オンライン講義で「もぐり」をしているとバレますか!?
―――オンラインだと潜りにくい問題があると思うんですけどクラスコードとか教えてもらったら見れる
google classroomは入った人の名前残るけど、僕は誰が入っているか確かめていません。違う人が入っているだろうな、と想定していますし、何なら親御さんにも見られているだろうな、と思っています。だから下手なことが言えないですよ。ある会社の悪口を言おうものなら、その会社の経営者が聞いているかもしれないから。
―――そういう雑談が記憶に残ったりするから、もったいないですよね。
確かにそうで、そういう軽口をたたくことが、皆さんにとって、「面白いな」と思ってもらえるきっかけになるのは間違いないので、ちょっと失言を気にしすぎるのはどうなのかな、とは思う。企業の批判は言っても良いと思います。倫理的に問題あることは言ってはいけないと思います。
―――先生が今もぐれるならどの授業に潜りたいですか。
ベイズ統計です。研究で使われていて、すごそうだなと思うんですけど、さっぱり分からないんですよ。だから経済学部のベイズ統計の授業に潜ってみたいです。
教員と学生は対等な関係
―――吉岡先生って生徒との距離が近い、というのが評判で、だからこそゼミの人気も高いと思うんですけど、吉岡先生としては、先生と生徒のコミュニケーションについて、どのように考えていますか。
まあここは大学なので、大学の歴史的なところで言うと、教員や教授と学生は対等な「お互い学び合う人」なわけですよね。だからこそ、学生さんにも私たちは知識を提供してほしいという要求事項はあるんですが(笑)。そのくらいの感覚で全然構わないと思います。本来の大学ってそういう環境なので。小学校じゃないですからね。大学という高等教育の場には、本来どんな年代の人がいても、20代だけじゃなくて30代40代50代60代がいてもおかしくない。そういう意味で大学は対等で知的な議論をする場所だと思っていますので、遠慮なく知的な議論をしましょう。
―――なるほど、それが大学の本来の機能。
はい。だから、無理に壁を作らなくてもいいと思います。講義形式の場では先生と学生の立場にどうしてもなってしまうけれど、ゼミ等その他の領域では先生と生徒はイコールな関係だと思います
―――一橋学生と大学の距離が近い大学だと思いますか。
当然国立なので、一教員に対する学生数が少なくて、距離を近くできるというのがあると思います。私立の大きい大学だと人数比があまりにも大きいので、距離を近づけようとしてもどうしても時間の限界で無理ということが起こるんですね。私立の大学もいい環境だと思うんですけど、教員学生比を考えると、1人あたりに時間を多く割けないんだと思います。そこをサポートしようとすると破綻してしまうんだと思います。
―――せっかくだったら、オフィスアワーも遠慮なく使っておいた方が良いですか。
はいはいもちろん。それは教員にとっても勉強になります。例えば、授業のアンケートやレポートの中でもハッとさせられるような回答がありまして、「これいい指摘だなぁ」と思ったら授業をちょっとずつ変えていくことができるんです。良い教科書って、最初のページなどに「何年くらいの誰の何とかの授業でこの本良くなりました」ということがよく書いてあるんですよ。教員もその分野に自信を持って授業しているはずなのに、なお気づきがあるというのが面白いことだと思います。
―――オフィスアワーって先生の肌感覚だと使っている人は少ないですか?
確かに、学部生だと少ないですね。
―――オフィスアワーで質問するのってハードルが高いような。
オフィスアワーって授業の質問でいいんですよ。実はオンラインだと良い事が1個あって、対面の授業だとみんなの前で質問すると他の人の時間を奪っちゃうと思ってできないじゃないですか。今は質問フォームをmanabaで作って、回答をビデオにして流すことができ、みんなにとって役立つ情報を共有できるというのはすごくいいなと思っています。学生の皆さんにとって良いだけではなく、僕にとってもすごくやりがいがあるので。何だったらその教科書よりも質疑応答だけ聞いたほうがいいんじゃないかなと思うくらいです。だから、授業の質問してくれるだけでも充分かなと思います。
―――最後にコロナ禍において、学生にこうあって欲しいと言うメッセージはありますか?
できることがやはり限られてしまうというのが辛いところだと思うんですが、逆に言うと他のことを後回しにしてよくって。今は将来何か役に立つかもしれない知識収集とか勉強に当てて、人との交流は後回しにしてもいいんじゃないかなと思います。どちらもどこかでやんなきゃいけない事ではあるので、時間の順番を変えるだけでいいのかなぁと思います。とはいっても大事にしてほしいのは、横のつながりですね。それは学び合う仲間でもいいし、お互い刺激にもなるし、大学でしかできないことなので、ぜひ横のつながりはオンラインでもできる範囲でやってください。やって欲しいなと思います。
おわりに
「教員と学生は対等な『お互い学び合う人』」と仰っていたのが印象的でした。今回のインタビュー含め、吉岡先生とお話しする際はいつも、私たち学生を一人の大人として尊重してくださっていると感じていましたが、根底にはこのような考えがあったのだと知り、改めて素晴らしい先生だと思いました。それと同時に、学生として受動的に知識を吸収するだけでなく、能動的に知的営みをしなければならない、と身が引き締まる思いを強く感じました。
最後に改めて、吉岡先生ありがとうございました。
実は、大変充実したインタビューだったため、編集しきれず記事には載せられなかったお話もあります。そこで別リンクでインタビューの全文も閲覧可能にさせて頂きました。興味のある方はこちらからどうぞ。
ではでは。