センター試験国語第二問の名作特集

センター試験、実は隠れた名作の宝庫!?


こんにちは、九竹ちるです。

今日からセンター試験ですね。未来の後輩を決める受験がいよいよスタートしました。時が経つのは本当にあっという間で、自分が受けてからもう1年なんてびっくりです。

 

受験というのは人生の一大イベント、一橋に入学してからも受験の話は共通の話題としてたくさん出たと思います。中でもセンター試験はその年の受験生の大多数が同じ試験を受けているわけですから、盛り上がること必至ですよね。

 

そして毎年特にtwitterを賑わせるのが国語の問題。

 

(画像引用元)

 

近年出題された文章を振り返ってみると……

 

 

よくわかるセンター国語

2009年 引越しするから家具破壊
2010年 沈黙親子
2011年 ゴ・メ・ン・ナ・サ・イ・ネおばさん
2012年 たま虫を踏み潰すお嬢様
2013年 スピンアトップスピンスピン
2014年 おほほほほ・あはははは
2015年 教えて君・教えてあげる君

 
 
 

・・・。

 

そして今年の問題も早速話題になっています。

 

よくわかる2016センター国語
評論
「リカちゃん人形!二次創作!やおい!メイド喫茶!」

小説
母親「旦那クソだわ」
息子「父ちゃん…」

古文
男「透明人間になったわ」

漢文
男「小さい頃に死んだかーちゃんが夢に出てきた」

 
 
 

 

エスカレートしてる。

 

あっという間に「センター国語」「リカちゃん人形」はトレンド入りです。

 

 

このように、センター国語というとなんだか変な文章が出るみたいなイメージがここ最近ついていますね。でも実はセンター試験の問題には名作もたくさん使われているんです!(決して最近のがひどいなんて言ってない)

 

というわけで今回は、センター試験国語の第二問から、過去に出題された名作を4つご紹介します。中には過去問で全文読めるものもありますので、家に赤本が残っている方はぜひ探してみてくださいね!

 

 

1. 19歳の夏、海の見える町


96年本試験『TSUGUMI』

 
 

吉本ばなな 著

中公文庫

 

<作品紹介>

病弱で生意気な美少女つぐみ。彼女と育った海辺の小さな町へ帰省した夏、まだ淡い夜のはじまりに、つぐみと私は、ふるさとの最後のひと夏をともにする少年に出会った―。少女から大人へと移りゆく季節の、二度とかえらないきらめきを描く、切なく透明な物語。第2回山本周五郎賞受賞。(amazonより)

 

 

1冊目は、現在の多くの1年生が生まれた1996年の本試験からこちらの作品です。平成初のミリオンセラー小説で、1990年に映画化もされています。

 

19歳の夏、海の見える町。the・青春なシチュエーションで、読者の心を掴んでいきます。

 

「人のいちばんいやがることを絶妙のタイミングと的確な描写でずけずけ言う時の勝ち誇った様は、まるで悪魔のようだった」とあるように、病弱なつぐみはかなり強気な性格ではじめは嫌な感じがしますが、なぜか憎めない。

 

登場人物と同年代の今と、大人になってからと、二度楽しみたい作品です。

 

全然関係ないですが驚いたのは問題文が短いこと。最近のセンター国語はどんどん量が増えていて、2014年の第2問は文章が8ページあったのに対し、この96年は4ページ。この20年弱で2倍になっています。もっと早く生まれたかった。

 

 

2. 涙で問題が解けない!?


 01年本試験『つめたいよるに』より「デューク」

 
 

江國香織 著

新潮文庫

 

<作品紹介>

デュークが死んだ。わたしのデュークが死んでしまった―。たまご料理と梨と落語が好きで、キスのうまい犬のデュークが死んだ翌日乗った電車で、わたしはハンサムな男の子に巡り合った…。出会いと分れの不思議な一日を綴った「デューク」。コンビニでバイトする大学生のクリスマスイブを描いた「とくべつな早朝」。デビュー作「桃子」を含む珠玉の21編を収録した待望の短編集。(amazonより)

 

 

2001年のセンター試験国語Ⅰでは、江國香織の短編集の中から「デューク」が全文出題されました。センターだけでなく中学入試にも出題されたり、2006年には優香主演でドラマ化もされたりと、各方面から評価が高い名作です。

 

愛犬との別れにまつわるファンタジーで、感動のあまり試験中に涙を流す受験生が続出したという話でも有名です。「いくらいい話だからって試験中に泣くなんて流石にないでしょ(笑)」と思うかもしれませんが、読めばわかります。ちなみに昨年のセンターでは数ⅡBの時間にすすり泣く声が聞こえたとか聞こえないとか……?

 

たった8ページに寂しさと温かさがギュギュッと詰まっていて、短いのに大満足。むしろ短いぶん物語の全部が色濃く記憶に残ります。全てを理解した後、二度目に読むと点と点が繋がってさらに切なくなる、ぜひ手元に置いておきたい一冊です。

 

 

3. ピース又吉もお気に入り


07年本試験『雪沼とその周辺』より「送り火」

 
 

堀江敏幸 著

新潮文庫

 

<作品紹介>

小さなレコード店や製函工場で、時代の波に取り残されてなお、使い慣れた旧式の道具たちと血を通わすようにして生きる雪沼の人々。廃業の日、無人のボウリング場にひょっこり現れたカップルに、最後のゲームをプレゼントしようと思い立つ店主を描く佳品「スタンス・ドット」をはじめ、山あいの寂びた町の日々の移ろいのなかに、それぞれの人生の甘苦を映しだす川端賞・谷崎賞受賞の傑作連作小説。(amazonより)

 

 

こちらは2007年の出題作品ということで、過去問を解いた方も多いのではないでしょうか。あの「習字で告白」したやつです。

 

2013年に開催された「ピース又吉がむさぼり読む新潮文庫」というフェアででは、彼が”むさぼり読む”20冊に選ばれました。著者の堀江敏幸も2001年に芥川賞を受賞しています。

 

「雪沼」という架空の町を舞台にした短編集。その中で出題されたのは「送り火」という短編の一節です。

 

主人公の絹代さんは、父の死後、あいた部屋を独身女性限定で貸すことにしましたが、実際に借りたのは陽平さんという中年男性。そこで書道教室を始めた陽平さんは、書き初めで「絹への道」と書いて絹代さんにプロポーズします。そんなプロポーズクサすぎるでしょ。試験中なのに思わずクスッと笑ってしまうような、ほっこりする場面で問題文は終わるのですが……。

 

そのままハッピーエンドかと思いきや、実はこの作品、全文読むと全く違う雰囲気の物語だとわかります。問題文は全て絹代さんの回想シーンだったのです。センターの印象で読み進めると見事に裏切られます。ぜひご一読を。

 

 

4. 追試にも名作が!


15年追試験『大庭みな子全集第8巻』より「紅茶」

 
 

大庭みな子 著

日本経済新聞出版社

 

<作品紹介>

懐しい肉親の生涯と自らの人生の原体験を語りつつ大庭文学の中核を開示する『舞へ舞へ蝸牛』と、人間の欲望の究極のかたちを象徴的に捉えて『ふなくい虫』『浦島草』と三部作をなす『王女の涙』ほかを収録。(amazonより)

 

 

こちらは最新! 昨年の追試験から一作品です。追試験って過去問でもそんなに解かないしあまり触れる機会がないですが、本試に劣らずいい作品が使われています。昨年は大庭みな子の「紅茶」が全文出題されました。

 

主人公は夫に先立たれた70歳のおばあさん。子や孫からなんとなく疎外感を感じつつ、言いたいことも言えずに遠慮していますが、公園で出会った似た境遇のおじいさんに思いを寄せ始めます。二人は度々会ってお茶をして話をして、迷いつつももう一度「青春」を味わおうと決意するというお話です。

 

「おばあちゃんはもうむかし、さんざん愉しい時を送ったんでしょう。わたしなんかまだこれからなんだから。おばあちゃんが口ぐせに言うように、青春はあっという間に飛んでっちゃうわ。」という孫のセリフがすごく印象的です。青春はあっという間にすぎるからこそ大切でキラキラした思い出になるのだろうと思う反面、歳を取ってからだって時にはそんな時間を過ごしたいとも思います。

 

おばあさんを旅行に誘うおじいさんがぎこちなくて、まさに甘酸っぱい青春そのもの。二人の様子がとっても可愛らしい70歳の青春ストーリーです。短編集の中の一作ですが、この作品だけであれば大学入試センターのサイトから過去問を入手して読むこともできます。サクッと読める長さなのでぜひ!

 

 


いかがでしたか?

受験期にはただの問題としか思っていなかったかもしれませんが、実は毎日たくさんのステキな作品と出会っていたんですね。

 

ぜひみなさんも赤本をパラパラめくって、お気に入りの作品を見つけてみてください。受験を経た今、心おきなく楽しめると思いますよ。

 

以上、「センター試験国語第二問の名作特集」でした!