国分寺と立川の中間地点、「ガチ国立」はどこだ

こんにちは。新人ライターの会津(あいづ)です。出身は兵庫県です。

一橋大学が位置する大学のまち、東京都国立市。

一橋大学のほかにもたくさんの研究・教育機関が立地する落ち着いた文教地区ですが、「国立」という漢字をぱっと見ただけでは読み方が「こくりつ」だか「くにたち」だか分からないのが難点です。「国立音楽大学」は国立(こくりつ)っぽすぎるけど私立である、というネタが定期的に話題になりますね(ちなみに国立音大は現在お隣の立川市にあります)。

そんな国立市ですが、もともと東京都心にあった一橋大学が関東大震災の被害を受けてこの地に移転する際に、街自体が学園都市として新たに開発されたという経緯があります。そのときに東隣の「国分寺市」と西隣の「立川市」から頭文字を拝借して「国立市」と名付けられた、的な話を聞いたことがある方も多いでしょう。

しかし、改めて思いませんか?

名付け方があまりにも安直すぎやしないか??? と。

現在となっては歴史ある立派な市名ですからこんなことを申し上げるのは国立市の関係者各位に大変な無礼ではございますが、いくら両隣に大きな街があったからって頭文字とって市名を付けるか?しかも「国立」は「こくりつ」って読むやん???とちょっと思ってしまいますよね。桃から生まれた桃太郎もびっくりの安直ネーミングじゃねぇかと。

そしてなにより気になるのが、国立市は本当に国分寺と立川の中間にあるのか?という問題です。

というのも、国立市は意外と南北に長く、国立駅は市内でもかなり北の方に位置しているのです。一橋生の多くにとっての「国立」は国立駅から大学までの500mかもしれませんが、実際の「国立市」はずっと南まで広がっているというわけですね。

ということで国分寺市、立川市、国立市の位置関係を改めて確認してみましょう。果たして本当に国分寺市と立川市の中間なのでしょうか。

……中間といえなくもないですが、どちらかといえば三つ巴のような位置関係になっています。あんまりしっくりこない。

抽象化された自治体たちの図

中間と聞くと、なんとなくこういう位置関係をイメージしてしまいますよね。仮にこれだったら「国分寺と立川から一文字ずつ取って国立と名付けよう!」となるのもギリ理解できるというものです。

しかし、文句を言ってばかりはいられません。この名付けシステムにふさわしい、本当の「国立」といえる場所を探そうじゃありませんか!

というわけでここからは「国分寺と立川のガチの中間地点、すなわち『ガチ国立』はどこなんだ?」というテーマで調査をしていこうと思います。

コンテンツ

駅の位置

まずは駅の位置を基準として中間地点を求めましょう。国立市が南北に長いとはいえ、「国立」と聞いて多くの人がイメージするのは国立駅の周辺エリアでしょう。それならまずは駅から考えるのが自然ってもんです。

(ちなみに改めて説明すると国立駅はJR中央線の駅で、東京方面から順に 国分寺駅→ 西国分寺駅→ 国立駅→ 立川駅 という並びになっています)

ところでこの記事で「中間地点」を求めるにあたっては、国分寺と立川それぞれの代表地点(ここでは駅)について、北緯と東経を10進法で表したものを調べ、それらの平均をとるという超分かりやすい方法をとります。厳密には地球が球体であることを考慮して算出すべきなのでしょうが、私(会津)は極端に数学が苦手なのでちょっと大目に見てください。

ということでまずは国分寺駅の北緯と東経ですが、こちらは「35.70391187067973, 139.48068327292978」とのことです。グーグルマップの情報をコピペしたのでこれがどれくらい厳密なデータなのか、またどれくらい厳密であるべきなのかは一切不明ですが、まぁいいでしょう。

次に立川駅についてですが、「35.700336070143166, 139.41404536962978」ですね。

そして両者を単純に足して2で割ります。ここでの中間地点は「35.702123970411448, 139.44736432127978」と分かりました。マップに表示してみましょう。

マジで真ん中だ。

南北方向に多少ずれがあり、そのため住所上は国分寺市のようですが、東西方向に関してはほぼドンピシャで国立駅の位置になりました。

国立よ、疑ってすまねぇ…という気持ちにさせられますが、実はこれは当然とも言える結果。というのも、国立市街の開発がそもそも「駅」を基準に計画・実施されたそうで、国立に新たな駅を設けるに際してちょうど国分寺駅と立川駅の中間地点を選んだという経緯だったようです。

国立市のホームページにもしっかり書いてありました。

国立という名は、大正時代の末期、箱根土地株式会社によって谷保村の北部の山林が開発された際、まちの名前を選ぶときに出てきました。当時の中央線は国分寺の次が立川で、ちょうどその真中に当たる場所に駅をつくることになっていたため、両方の頭文字を取って「国立」にしようという声が上がりました。

国立市の概要/国立市ホームページ

若干の拍子抜け感がありますが、せっかくなので現地に行ってきました。撮影に同行してくれないかと友人に頼んでみたのですが、「お前が変人であるのは自由だが、俺は変人の友人でありたくない」というお言葉とともに丁重にお断りいただきました。記事執筆という崇高な務めを果たしているというのに失礼な奴です。

国立駅の北側、マンションとかが立ち並ぶエリアですね。ちなみにこの写真はしかたなくカメラを自転車に置いて自撮りしているのですが、こんな格好で民家の前に長居していると独特の思想を持った迷惑系活動家だと間違われて通報されかねないので早めに撤退します。

反対側はこんな感じ。さすがは「ガチ国立」、文教地区にふさわしく閑静でゆったりとした空気が流れています。

市役所の位置

ひとつめの基準「駅」で完全に論破されたような気分になりましたが、駅だけが市の要素ではありません。ほかに市を代表する場所といえば……市役所です。カーナビで「〇〇市」と検索するとたいてい代表地点として市役所が表示されますし、なんといっても行政の中心地です。市役所こそ、その市を象徴する場所だと言っても差し支えないでしょう。

というわけで市役所の位置を基準に中点を求めていきます。

まずは国分寺市役所(第一庁舎)の位置を調べます。「35.71048356933099, 139.46315038009593」とのこと。

続いて立川市役所。「35.713934929308614, 139.40804408750122」です。

そして2点の中間地点は「35.712209249319802, 139.435597233798575」となりました。やってることはただの足し算と割り算(しかも電卓)なので小3でもできるのですが、桁数の多い数字を見ただけでウッとなってしまうのが数学ぎらいの悲しいところです。

求めた地点をマップに表示すると……

「国分寺市西町4丁目」らしいです。国立市ちゃうんかい

ほぼ立川市との市境ですが、住所上はギリギリ国分寺市ですね。綱引きに辛勝したみたいな感じです。とはいえ国立市との市境からは直線距離で1km以上も離れた地点が表示されてしまいました。「第2の『ガチ国立』は国分寺市西町」。大ニュースですね。

こちらも現地に行ってきました。

ピントが合っていないのは撮影技術がないせいでもありますが、主な原因は前方から自転車に乗った高校生の集団が来ていたので大急ぎで撮影したことです。これほど純度の高い「恥ずかしい」を味わうのは久しぶりでした。

反対側の写真。こちらもザ・住宅街といった感じです。

市の重心

最後は図形的なアプローチでやってみましょう。市を平面図形とみなして重心を求めます。

ちなみにまったくの余談ですが、東京都(島しょ部を除く)を平面図形とみなしたときの重心は国分寺市だそうです。何やら看板とかもあるらしいので興味がある方は行ってみてはいかがでしょうか。

そして気軽に重心を求めるといったものの、三角形の重心ならともかく国分寺市と立川市の重心を求めるのはあいにく数ⅡBまでの知識では無理です。というわけでインターネットに公開されている「複雑な図形の重心を算出してくれるツール」とやらを使って重心を求めたいと思います。便利な世の中ですね。

作業としては単純で、グーグルマップで市の領域を表示し、それを見ながら多角形を作図するという面倒&精度の低いプロセスをこなすだけです。

こんな感じでやりました。理系のみなさまには理解しがたいであろういい加減さですが、そもそも「ガチの国立はどこか」というスタート地点が我ながら意味不明ではあるのでそんなもんだと思っていただければ助かります。もし市の重心を求める良い方法をご存じでしたらご一報ください。できれば高校範囲までで出来るやつでお願いします。

といった具合で非常に大雑把な求め方になってしまいましたが、とりあえず国分寺市の重心らしき場所は「35.70504877686331, 139.46451992797773」のようです。自分の中の理系的良心が「せめて3回やって平均をとれ」とささやいてきたので3回も目視で作図して求めた重心の平均です。

立川市の場合も同様の手順で算出し「35.71402133419657, 139.40455342321675」となります。

というわけで中間地点は「35.70953505552994, 139.43453667559724」ですね。

「国分寺市西町3丁目」となりました。先ほど市役所の位置を基準に求めた中間地点が「西町4丁目」だったので、かなり近いです。「『ガチ国立』、国分寺だった説」がいよいよリアルなものとなってきました。

懲りずに現地で撮影します。先ほどの地点から自転車で1分とかからずに到着しました。

この場所も交通量のやや多い道路に面しているものの、住宅がメインの落ち着いたエリアです。

左の方に写っているバンの社名がなんだか物騒ですが、調べたら牛とか豚とかの食肉を扱う会社のようで安心しました。超絶ポップな闇企業かと誤解するところでしたね。

というわけで3種類の求め方で「ガチの国立」を算出してきましたが、

結論:文字通りの意味での「国立」は国分寺市の端っこかもしれない。

というゴールになりました。

一応ちゃんとしてるっぽいことを言うならば、国立市の名前の由来については「国立市は国分寺市と立川市の中間だから国立市と名付けられた」というよりは「国立駅は国分寺駅と立川駅の中間だから国立駅と名付けられたし、それが市名になった」という表現が正確だと言えそうです。一橋生のみなさんや未来の一橋生となるみなさんは今日からこの雑学をドヤ顔で語ってください。

私は「『ガチ国立』、国分寺だった説」を密かに提唱していきます。

それではまた次の記事でお会いしましょう! ライターの会津でした~