この時期に一橋大学生が避けては通れない問題、「暇」。私たちはこの暇を如何に解消すべきでしょうか。
非日常感を味わえ、かつ学生にとって有意義なコンテンツ……そう!裁判傍聴です!ご存知のようにこの日本は法治国家であり、日々罪を犯した人間が法の裁きを受けているのですが、その場面は原則として公開されています。つまり、司法という国家の根幹をなす三権の一つが執行されるプロセスに私たちは立ち会うことができるのです!このことを聞いただけでワクワクしてきましたね?ではこれから私たちが実際に傍聴した時の様子を記述しようと思います。
あ、申し遅れました。新人ライターのりんどばーぐです。ドゾヨロシク。
2024年1月某日、東京メトロ霞ヶ関駅にHASCメンバー3人が集合しました。A1出口を出て左手には総務省、左前には警視庁の庁舎が見えます。中央官庁が立ち並ぶこのエリアに降り立っただけで特別感が味わえます。20秒ほど直進すると右手に東京地方裁判所の入口が現れます。
建物に入るとまずは手荷物検査を受けます。カバンや携帯電話をかごに入れてX線かなんかに通し、自分たちは金属探知機のゲートをくぐります。するとここで私たちは衝撃的なものを目撃しました!なんと、裁判傍聴芸人・阿曽さんがロビーに降臨していたのです!!ほんとに来てるんだなぁwwwwテレビとおんなじように異彩を放つファッションでした。
感動を終えたところで次は傍聴する裁判を選びます。ネットでは裁判の予定は公表されておらず、基本的には裁判所に行って初めてわかるという感じです。ロビーにあるタッチパネル端末を操作し、本日の開廷事件を検索します。カテゴリー別に「高裁刑事」「高裁民事」「地裁刑事」「地裁民事」「簡裁刑事」などと分かれており、それぞれ開始時間帯や公判の分類(新件・審理・判決)で絞り込むことが可能です。そして興味深い事件を見つけたら表示される法廷に移動しましょう。(民事は法人の裁判がメインになるようなのでちょっと難しいかも!)
そして該当する法廷に「傍聴人入口」から足を踏み入れ、椅子に座り開廷を待ちましょう。だいたい裁判官以外の人が揃っています。時間になると裁判官が入ってくるのでその時は起立しましょう。中の様子はこんなイメージ。
今日の1本目の事件は詐欺で、今回が初公判でした。
裁判の流れはまず、裁判官が被告人を証言台の前に立たせ、氏名や生年月日、住所などを質問し、被告人本人であることを確認することから始まります。
続いて、検察官が起訴状を朗読して公訴事実を説明します。
検察官「被告人は〇年〇月〇日、~~~の指示を受けながら、虚偽の情報を入力し、持続化給付金の申請を行い……欺いて口座に100万円の入金をさせたものである。 罪名 詐欺、刑法第246条。」
とかなんとか。
そしてこの裁判において被告人には黙秘権があることを裁判官が丁寧に説明します。
裁判官「この裁判で答えたくない質問には答えなくても被告人にとって不利益にはなりません。ただし、回答した内容は証拠として扱われることになりますので、そこ頭に入れといてください。」
とかなんとか。
それから証拠調べの手続きに入ります。
まず検察官は事件の内容について起訴状よりも詳細に述べ、これから証拠により立証しようとする事実を説明します。(冒頭陳述)
そして提出する証拠の内容をそれぞれ説明します。例えば「甲1号証は被告人のLINEのスクショです。乙1号証は被告の供述調書です。」など。
基本的にはここで提出された証拠が採用されるので、ドラマのように切り札的な重要証拠が後出しされることはないようです。
続いて弁護側が立証を始めます。
被告人の母親である情状証人が登場し、弁護人が尋問しました。
証人は初めに嘘をつかないことの誓約を行います。
「宣誓 良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないことを誓います。 証人〇〇(氏名)」
裁判官は証人に、嘘の証言を行った場合は偽証罪に問われることがあることを説明しました。
尋問では、
- 被告人から詐欺を働いた旨の相談を受け、自首を勧めた。
- 100万円の返還が必要だと考えるも、被告人家族は金を用意することが困難であった。被告人の姉夫婦が被告人に金を貸し、事務局に返還した。
- 裁判後は被告人と同居の上、交友関係や金銭の管理をし、被告人を監督する意思がある。これには被告人も同意している。 などなど
これらの内容が証言されました。
弁護人から質問されそれに都度答えていく方式で、全ての質問が終わると「弁護人からは以上です。」と発言があります。個人的にはこれがなかなかカッコいいのです。
本来なら検察官から反対尋問があるのですが、今回は特にありませんでした。
文章で書くのは困難を極めるのですが、被告人のお母さんが証言するのはとても涙を誘うというか悲哀が感じられるというか…一つの家庭の人間ドラマが垣間見られる一面があります。下手なホームドラマよりも心にくるものがあります。
続いて被告人質問に入ります。また弁護人から質問が始まります。
- 当時は金に困っていた。借金の返済に追われ、Uberの配達で稼いだ金だけではそれらを賄うことができなかった。
- 紹介された時は違法性は多少認識していたが金欲しさにやってしまった。
- 80万円は指示役の人物に送金し、20万円は懐に入れた。
- 自責の念に駆られ母親に相談、自首すべきとのアドバイスを受け入れ、警察署に出頭。
- 姉夫婦には月10万円ずつ返済する約束をしている。
- 二度と犯罪をしない。
弁護人からの質問には以上のような回答をしました。
続いて検察官からの質問です。
- 紹介者、指示役とは最初のやり取りを含めて対面していないし、現在は連絡を絶っている。自首を決断した際に、LINEのやりとりは証拠として保存すべきと考えブロック等はしなかった。
- 両親や姉には本当に申し訳ない。二度と犯罪はしたくない。
これらが検察官からの質問に対する回答です。
この後、検察官・弁護人双方から意見が述べられます。
検察官
- 事実の証明に関しては問題がない。
- 犯行は極めて計画的かつ組織的、詐取額も100万円と高額→悪質!
- 公的な給付制度の信頼性の低下につながる犯行であり、厳罰に処するのが妥当。
- 求刑 懲役1年4ヶ月
弁護人
- 公訴事実については争わない。
- そもそもこの犯行は被告人が発案したものではなく、指示に従っていたにすぎず、悪質性は高くない。
- 被告人が手にした利益は20万円に過ぎない。
- 自首が成立している。捜査にも協力的。
- 100万円を返還し、被害回復している。
- 執行猶予等、寛大な判決を求める
およそ1時間で審理は終了しました。次回判決の日にちを決めるために裁判官が検察官、弁護人双方の予定を聞き、(食事の予定決めるみたいなノリで)予定合わせが行われました。
閉廷後、傍聴マスターと目されるおじいさん(手には膨大な量の書類、メモ)から声をかけられました。
マスター「あれは絶対無罪だよ。詐欺じゃないよ、共犯じゃないからね。裁判官も検察官も弁護人も誰も分かってないんだよ、あれは無罪だよ。」
と目からウロコの主張を展開しました。(いや流石に無罪なんてことないやろ。)
マスターはその後被告人と両親にも接触しており、何やら変なことを吹き込んでるように見えました。(何なんだあいつ…)
何はともあれ、無事1件の傍聴が終わりました。初めて傍聴した先輩から「いやぁ面白いねぇ〜また来たくなっちゃう」という趣旨の発言があり、相当ご満悦のように見受けられました。
いかがでしたか?裁判の様子をうまく想像できたでしょうか。私は傍聴中にとったメモをもとに書きましたが、やはり文章では完全に伝えられていないと思います。百聞は一見にしかずと言いますがまさにその通りで、実際に見てみないと始まりません。
まるで映画のような非日常体験を。Why don’t you go to the court?